私はパソコンで仕事を続けていると目がショボショボすることが多くなりました。年齢的に涙液が少なくなるのは自然だと諦め、角膜保護剤の点眼と温罨法で凌いでいます。日頃の診療で感じますが、以前に増して多くの患者さんが同様の訴えや悩みをお持ちです。
目がゴロゴロする、目が重い、光がまぶしい、目が乾く、視力が落ちたなど訴える方の約半数に涙液減少を見つけます。肩が痛い、腰が痛いと訴える方が多くいます。が、同様にドライアイは本人にとってまことに不快なもので他人にはその悩みが十分理解されません。
以前は少なかった症状ですが、加齢のほか近年エアコン、パソコン、コンタクトレンズの普及により、ドライアイは増加してきました。学会の統計では、推定患者は800万人、高齢者の74%がドライアイといいます。
マスメディアの発達でドライアイの認知度は約70%とされますが、眼科医で確定診断を受けた方は約7%しかいないそうです。症状は涙液減少ですが、眼瞼にあるマイボーム腺の機能不全のほか白内障手術後、角結膜障害、涙液異常など様々なものが原因となります。症状軽減にはヒアルロン酸ナトリウムの点眼が最適ですが、日々のQOLを高めるため、症状が疑われたら一度専門医の診察を受けるのが得策です。
これまで重篤な病気ではないと軽く診ていた疾患ですが、わが身が自覚するようになり、患者さんの悩みが他人事とは思えなくなりました。医師はもっと視点を広げ、患者さんの満足度向上を念頭に置いた診療をしなければいけないと自戒しきりのこの頃です。

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写真は雪ノ下の群生、漢名「虎耳草」、昔は尿結石、やけど、中耳炎、ひきつけの薬として重宝されたようです。
(T.A)