短歌を趣味とされる高齢のご婦人からまた歌集52部が届きました。数年前に白内障の手術をされ眼底病変があるも経過良好で現在右0,7左0,5を保っておられます。その後顔面に続き頭部腫瘍の手術を受けご苦労されましたが無事治っておられます。この間ご主人や弟さんを亡くされましたが、その悲しみを乗り越え日々の生活を素直な気持ちで詠んでおられます。患者さんでもあるこのご婦人と親しく文通できることを有難いと思います。
歌集といっても大学ノートに日常の出来事や感じた思いを歌に詠み、日記を書いて目に留まった雑誌の切り絵を張ったご自分だけの大事な手作り集です。この中に新聞に投稿された入選作がありますので、今回はその作品の一部をご紹介します。
冬の海うねり逆巻く荒磯にふわふわ白く波華の散る
冬の海禊(みそぎ)する子等の逞しき掛け声エイエイ波間に響く
町内の親しき人等皆逝きて最長老の禄もつきたり
七海ちゃんのちじれ髪にころころと飾玉揺るる首振るたびに
寒行の僧にも似たる托鉢の鉄鉢(てつぱつ)の湯気頬を撫でいる
見る度にこらっと叫ぶ猫嫌い婆と猫とにへだてなき冬雨(あめ)
人生にとってその方が楽しめる趣味を持つことは長生きの秘訣なのかもしれません。ただぼんやりと過ごすのではなく自然に接し日々の出来事に関心を持ち、その思いを記すのは良いことだと思います。このご婦人のように取り巻く環境を少しでもプラス思考に捉え、物事に感謝して過ごすのはとても大切だと教えられます。 (T、A)