約50年の長きにわたり大学医局、勤務医それから開業医として眼科診療に携わって来ましたが、この間、世間知らずの医者バカといわれても仕方がない部類に属する者が患者さんからいろいろな事を教わってきたように思います。
医者を信頼して受診される患者さんは老若男女、健常者身障者、高額所得者無所得者、高学歴者低学歴者と千差万別でどなたも同列に扱うのは当然であり、医師は患者のお痛みを和らげるのが第一の務めだと思っています。が、勤務医当時は若く熱心さのあまり一方的になりがちで患者さんに十分納得してもらえたかと疑問に思います。
専門医としての診察にとどまらず身の上相談など受けることが稀にありますが、私はなるべく耳を傾けるように努めています。患者さんと一緒に考え悩みますが、いろいろ勉強をさせていただいていると思います。
当院で白内障の手術をされた高齢のご婦人がおられます.足が不自由となり通院が難しくなり和歌をしたため感謝の定期便が届くようになりました。私もうれしくて文通を続けるようになりましたが、優しいご婦人の便りが最近途絶えるようになりスタッフと共に心配しています。
和歌のことはよく分かりませんが、後書きされていた歌を紹介します。心優しい気持ちが表されています。
「歳月は総てを変えて乱れ世の殺生多き世を憂う婆」
「ときわ湖に悠然と浮かぶ白鳥の姿も消えてまぼろしと成る」
(注)23年1月鳥インフルエンザ発生のため白鳥がすべて処分された。
待合室用にいつもいろいろな花を届けてくださった婦人を懐かしく思います。 (T・A)